第4.5章

約束!またこの忌々しい約束という言葉に、夏目彩は聞くたびに暴れ出したくなる!

「そうね、あなたが言ったことは必ず守るって分かってるわ」夏目彩は心の底から沸き上がる怒りを抑えながら、むっとした声で言った。「でも、最初にあなたと付き合ったのは私だったのに」

北村健は最後の一服を吸い終え、吸い殻を車外に捨てると、夏目彩の手をしっかりと握り返した。その声色には甘さが加わっていた。「悪かった。何が欲しい?遠慮なく言ってくれ」

夏目彩は首を傾げて少し考えてから、「あのフェラーリ、もう乗りたくないの。マセラティに変えたいわ」

北村健は淡く微笑んだ。「変えよう」

「それと、一ヶ月間はあのおしの女のところに帰らないで」

「わかった」

夏目彩はようやく満足したように笑みを浮かべた。「行きましょ、仕事に」

山田澪はその車が遠ざかるのを見つめていた。振り返ったとき、彼女の手の中の雑巾はすでにくしゃくしゃに握りしめられていた。

彼女はその雑巾をテーブルに置いて伸ばした。まるで自分の縮こまった心臓をなだめるかのように。

「これでも怒らないの?」

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